0.はじめに
あなたはなぜ、不動産投資に興味を持ちましたか。儲かりそう? 簡単そう? リスクが低そう?
上手にやれば、どれも正解なのでしょう。その上手なやり方について、説明していきたいと思います。
ただ、心にとめておいてほしいのは、年200万円の収入を得るのに、6千6百万円の物件を取得する必要があります(後述)。つまり不動産投資といえども、「6千6百万円の新規事業」を行うのと同様の心構えが必要ということです。
さあ、覚悟をもって、細心の注意を払いながら始めていきましょう。
1.最初に「すべきこと」
(1)ターゲットを決める~本業年収の半分を目指す
・年収400万円の人はその半分、200万円の不動産収入を目指しましょう。
・3%の利回りとすると、「200万円÷3%」で、6千6百万円の投資物件取得となります。
(注)年収400万円、貯金ゼロ。この人が目指すのは、残念ながら不動産投資ではありません。投資物件取得に付随して、掛かる諸経費があるからです。
Q:フルローン(必要資金全額融資)があるんじゃない?
A:最近は、金融機関の審査も厳しく、フルローンは期待薄です。また、フルローンが可能だとしても「フルローンになるということは、毎月のローン返済額が高額になる」ということであり、ちょっとしたトラブル(入居者退所や自然災害)で、ローンの返済が行き詰ってしまいます。
(2)頭金・諸経費資金を準備する
・経費については、物件価格の15~30%持ちたいものです(6千6百万円で算定すると、ほぼ1千万円~2千万円となります)。
・もちろん、6千6百万円の物件を一気に購入する必要はなく(たとえば、2千2百万円の物件3棟)、最終的に資産合計で6千6百万円になればいいのですから、準備資金も個別物件取得分ずつ貯めればよいのです。
(3)家族と相談する
・配偶者と相談しましょう。なんせ、6千6百万円の新規事業です。
・さらに物件を取得すると、日々の収支管理や物件状況の確認、確定申告書類の作成など、本業を持つあなた一人ではほとんど不可能です。
2.業者選定
(1)物件を探す前に不動産業者を探せ
残念ながら、不動産業界への参入障壁が低いこともあり、一定の割合で悪徳業者が存在します。複数の業者を回ってみて、自分の目・耳で信頼できる業者を見つけましょう。
<判断基準の例>
・自分の投資ポリシーを、理解してくれているか。また、自分の要望が「無謀」な場合、修正してくれるか。
・良い物件を、紹介してくれるか。
・顧客本位に考えてくれているか。
・物件のシミュレーションは、実現可能か。
(2)複数業者を比較
複数の業者から話を聞くと、自分の知識が増加するとともに、営業マンの嘘も分かるようになります。複数業者は、以下の中から選ぶと、視野が広がります。
・中古を扱う業者と、新築業者
・区分マンションを扱う業者と、一棟もの業者(あるいは、戸建て業者)
(3)営業マンについて
以下の点に注意して、見極めます。
・物件が売りに出されている理由を、把握しているか
・物件の周辺を、実査しているか(周辺状況を、知っているか)
・デメリットも説明しているか
(加えて)営業マン自身に、不動産投資の経験があればベター
(4)販売後の賃貸管理
・「売りっぱなし」の業者が多いのも、実態としてあります。
・しかし不動産投資家としては、物件を取得してからがスタートであり、その面倒も見てくれる業者が必要なのは言うまでもありません。
(5)自身の調査・勉強が必要
・上記を満たす「良い業者・良い営業マン」を見つけたとしても、その営業マンに「おんぶにだっこ」ではいけません。自身でもさまざま調査し、また分からないことは勉強する必要があります。何度も言いますが、6千6百万円の新規事業なのです。
3.物件の決定
(1)エリアの決定
以下の点に注意し、エリアを定めます。
・ エリアの人口が、今後増加傾向にあるか(住宅地としての将来性。再開発やプロジェクトの予定)
・ 震災が起きた場合の被害確認(地域危険度マップ)、液状化リスクの確認。
(2)物件のチェックポイント
以下の点をチェックしていきます。
① 物件そのもの
a.外部関連
・モニター付きインターホンがあるか
・壁の厚さは十分か。近隣の生活音が、どの程度聞こえるか。
b.居室内
・コンセントの位置・個数
・エアコンの新しさ、機能
・照明器具の有無
c.ベランダ
・日当たり・眺望
・防犯性
・窓解放時のにおい
d.水回り
・キッチンの使い勝手
・トイレの仕様
・バスルームの広さ
・洗面台の使い勝手
② 共用部(マンションの場合)
a.出入口関連
・オートロック、モニター付きインターホンがあるか
b.宅配ボックス
・不在時に受け取れるため、必須。宅配業者を装った不審者の侵入も防げる
c.ゴミ出し
・清潔に保たれているか。分別、曜日の管理は適切か
d.駐車場
・料金はいくらか
・入出庫しやすいか
③ 周辺環境
a.交通アクセス
・業者の資料と差異はないか
b.周辺施設
・スーパー、病院、学校、コンビニの位置
c.周辺道路
・交通量、騒音を確認
3.買付申込~銀行ローン申込
(1)買付申込書の提出
上記の手順により、「任せたい不動産業者」「購入したい物件」が決まったら、買付申込書を提出します。これは売主に、「購入したい意思を示す」ものです。以下の情報を、記載します。
・物件の名称・所在地
・買付希望価格
・支払方法
・手付金の金額
・有効期限など
(注)買付申込書の提出によって、必ず購入できるわけではありません。同じ物件の購入希望者が、いる可能性もありますから。
(2)金融機関への申込【事前審査】
自分で金融機関に行くケース、不動産業者から金融機関を紹介してもらうケースの、二通りあるようです。後者のほうが、スムーズに進む確率が高いです(ここも、業者選定のポイントになります)。
<ローン申込時の必要書類>
・既存借入の返済明細表
・身分証明書
・購入物件の収益が分かる資料
・保有不動産の評価額が分かるもの
・保有金融資産が分かるもの
(注)この段階では、あくまでも「事前審査」であり、売買契約後に「本審査」を経て、融資実行となります。
4.売買契約締結
銀行の事前審査でOKが出たら、不動産業者と(あるいは不動産業者を仲介として)売買契約を締結します。
重要事項が説明されますが、自分が納得いくまで、契約は留保しましょう。疑問点をすべてクリアにしてから、押印しましょう。
(注)銀行ローンで購入する場合は、「融資特約」をつけましょう。これは、銀行ローンが承認されない場合に、ペナルティなしに売買契約を解除できる特約です。これがないと、手付金は戻ってきません。
5.銀行へ、本審査申込
2週間から、1か月程度要します。
事前審査時と条件が変わっていなければ、基本的に承認されます。
6.物件引き渡し
(1)最終チェック
売主、買主、不動産業者が立ち会って、物件が引き渡し可能な状態にあるかチェックします。
(2)所有権移転
銀行ローン実行、代金支払い、所有権移転登記等、最終手続きを、関係者が一堂に会して行い、手続き完了となります。
7.おわりに
記事の途中で、「6千6百万円の新規事業」と何度かコメントしましたが、「全部管理会社任せ」とか「何もせずに毎月家賃収入が入ってくる」訳ではないのです。
大家として、できることはきっちり行い、店子との良い人間関係を構築することで、事業が継続できるのです。
では、新人大家さん、ガンバレ!