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インボイス制度で課税事業者になったフリーランスの今後の進め方

インボイス制度の導入により、これまで消費税の免税事業者だったフリーランスも、課税事業者に転換するか否かを決定する必要があります。課税事業者になった場合、メリットとデメリットの両方があるため、今後の進め方を慎重に検討することが大切です。

 

このレポートでは、課税業者への転換を選択した後の対応について詳しく説明します。

課税事業者になった場合のメリットとデメリット

最初に、免税事業者と課税事業者のそれぞれのメリット・デメリットをおさらいしておきます。

メリット

最大のメリットは、取引先(フリーランスへの仕事の発注先)が「仕入税額控除」が可能になることで、納税消費税額が増加しないことです。

フリーランスが免税事業者の場合は、取引先では「仕入税額控除」ができず、結果として消費税納税額が増加します。

(注)「仕入税額控除」については、消費税の計算方法の節で説明します。

 

このような仕組みにあることから、フリーランスが課税事業者になった場合、これまでの取引先から、継続して仕事が発注される可能性が高くなります。

デメリット

最初のデメリットについては、メリットの裏返しですが、取引先から取引を打ち切られたり、納税消費税増額分に相当する額の値引きを要求されたりすることです。

 

次のデメリットは、消費税の納税義務が発生することです。納税額算定の概要は次節で説明しますが、結構煩雑で、加えて「消費税を納税する」という手持ち資金からのマイナス行為も発生します。

<参考>納税消費税の計算方法(原則課税の場合)

納税消費税の計算式は、以下のとおりとなります。

 

受け取った消費税 - 支払った消費税 = 納税消費税

 

そして「支払った消費税」を控除する行為を、『仕入税額控除』と言います。インボイス制度導入前はすべての(支払い行為に対する)領収書を合算して仕入税額控除できたのですが、制度導入により以下のとおり注意が必要になっています。

 

仕入税額控除に合算できる領収書・請求書には、インボイス番号が表示されている必要がある。

・領収書等の発行者がインボイス番号を入手するためには、課税事業者である必要がある。

フリーランスとしては(インボイス番号のない)免税事業者との取引は、(納税消費税額が増えるので)考え直す必要がある。

 

メリット・デメリットの節で説明したのは「取引先の仕入税額控除」にまつわる話だったのですが、これがフリーランス自身の問題にもなるのです。

(注)当面の間「免税事業者への消費税支払における経過措置」が講じられており、免税事業者に支払った場合でも、一定の割合は仕入税額控除に合算できます。

 

また、原則課税を選択した場合には、インボイス番号の記載された領収書等を保存しておく必要があります。

簡易課税方式の選択

原則課税方式は「支払った消費税額の集計」作業が必要でしたが、簡易課税方式では「受け取った消費税額」のみにより納税額が計算できる簡易な方式です。みていきましょう。

簡易課税方式での計算手順

1.自身の業種の「みなし仕入れ率」を確認する

 

第1種事業

卸売業

みなし仕入れ率90%

第2種事業

小売業

みなし仕入れ率80%

第3種事業

建設・製造業

みなし仕入れ率70%

第4種事業

飲食店

みなし仕入れ率60%

第5種事業

サービス業

みなし仕入れ率50%

第6種事業

不動産業

みなし仕入れ率40%

 

2.簡易課税方式による納税消費税額の計算

 

受け取った消費税A - 控除できる消費税(A×みなし仕入れ率) = 納税額

 

例)サービス業で、年間売り上げ330万円(消費税30万円)の場合

300,000円 -(300,000円×50%)= 300,000円 -150,000 = 納税額150,000円

簡易課税方式を選択する場合の提出書類

今回の制度変更に伴い、免税事業者から課税事業者に転換した場合、何もしなければ「原則課税方式」が適用になります。簡易課税を選択する場合は、以下の手続きが必要です。ただし、基準年(前々年度)における課税売上が5,000万円以下という制限があります。

 

1.提出書類・提出先

消費税簡易課税制度選択届を、所轄税務署に提出する(e-Taxでも可能)

2.提出期限

今回の制度変更に伴う場合で、令和5年分(令和6年3月申告)からの適用を希望する場合は令和5年12月31日

簡易課税方式選択の注意点

計算式からわかるとおり、簡易課税制度は「支払消費税」が多い場合、そのメリットは享受できません。したがって、工場設備や建物など大きな買い物を予定している場合には、検討が必要です。

その他の特例

インボイス制度の導入に関しては、いまだ反対意見も根強く、政府もさまざまな激変緩和措置を導入しています。

2割特例

今回のインボイス制度変更に伴い課税事業者になった場合、消費税の納税額を売上税額の2割に軽減できる制度です。3年間のみの特例です。

 

先ほどの「簡易課税による納税額」を例に説明します。

<簡易税方式の場合>

300,000円 -150,000 = 納税額150,000円

<2割特例利用の場合>

受け取った消費税×20% = 納税額

300,000円×20% = 60,000円

 

また、2割特例利用にあたり、特に届出等は必要ありません。

少額特例

原則課税を選択した場合、仕入税額控除を行うためには、領収書等にインボイス番号の記載が必要だと述べました。これに対する特例です。

 

領収書等の金額が少額(1万円未満)の場合は、インボイス領収書等の保存が無くても、帳簿のみで仕入税額控除を可能にする特例です。特例期間は6年間で、利用できるのは基準年(前々年度)における課税売上高が1億円以下である、などの条件があります。

まとめ

インボイス制度の導入により、フリーランスも課税事業者になる選択肢が出てきました。課税事業者に転換することにはメリットもデメリットも存在し、その両面をしっかりと理解することが重要です。

 

制度の詳細や自身のビジネススタイルに合わせて、適切な課税方式や特例の利用を検討することが、今後のフリーランスとしての成功に繋がります。